題名:“Göbekli Tepe”に見る宗教的な概念
報告者:ダレナン
“Göbekli Tepe”はトルコにある世界最古の寺院の跡だと考えられている遺跡である。その建立は、紀元前の約12000年前とされ、まさに狩猟が中心の石器時代の最中である。そのため、約10000年前に起こった人類が躍進したきっかけと考えられていた農耕よりも先の時代に位置し、人類は農耕ではなく、狩猟に伴う宗教的な価値によって躍進したとして、“Göbekli Tepe”の詳細が明らかになるにつれ、今までの人類史の定説が塗り替えられつつある。“Göbekli Tepe”遺跡の発掘エリアを図に示す。
遺跡の最初の発掘は1963年に遡るも、それを詳細に発掘し、“Göbekli Tepe”の名を一躍有名にしたのはドイツ考古学研究所に所属するKlaus Schmidt博士である。その内容は文献2)に詳細に記述されているが、発掘された各石碑には動物だけでなく、人のレリーフも刻まれ、その位置関係や配置状況から人や動物における狩猟関係の宗教的な意味合いがそこにあり、また、周りに住居等の痕跡もないことから、“Göbekli Tepe”は、特別な信仰の場所であったことが推測されている。この宗教的な信仰の意味についての
図 Excavation area at Göbekli Tepe1)
解釈は、紀元前12000年前の遺跡の痕跡のみから推定することは決して容易ではない。しかしながら、その建立の年代を加味しても、人類は農耕という出来事によって互いを共同する価値が生じたのではなく、宗教という抽象的な概念でもって互いを共同する価値を獲得できたことが示唆されている。すなわち、宗教的な概念は、実は人が他者を互いに認めるようになった根源であった可能性が高い。
人類の歴史を紐解いても、宗教の価値の違いから起きる衝突は非常に多い。それは、過去の世界大戦だけではなく、昨今のテロ活動も、ほとんどのきっかけが宗教の価値の違いから生じていることが多いことからも分かる。換言すれば、その価値を決める宗教的な概念は、実は人類の存在の根底に対して、特別な意味がある。
狩猟時代であれば、人は互いに共同しあうことでようやく獲物をしとめることができた。裏を返せば、それは互いの協力なくしては成し得ない成果でもある。しかしながら、農耕以降の人類は互いの狩猟時代の協力を忘れ、個々の利益を追求しすぎたようでもある。この“Göbekli Tepe”も、後年に土に埋められ、何かが葬られた。その結果が、現在の人類の姿を反映しているようでもある。
1) http://www.ancient.eu/uploads/images/4015.jpg?v=1438674841 (閲覧2015.12.11)
2) Schmidt, K: Göbekli Tepe – the Stone Age Sanctuaries. New results of ongoing excavations with a special focus on sculptures and high reliefs. Deutsches Archäologisches Institut Documenta Praehistorica XXXVII.: 239-256, 2010.