題名:GPSにおける時間の補正について
報告者:ログ
本報告書は、基本的にNo.945の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
先の報告書では地球上における時間の遅れについて、その現象には、Gravitational time dilation(重力による時間の遅れ)と、Time dilation of moving particles(速度による時間の遅れ)の2つの条件があることが報告された。
一方、現在のスマートフォン(スマホ)を始めとして、ナビゲーション機能がある機器には、一般的にその位置を特定する機能が備わっている。それ位置を特定させるのは、GPS(Global Positioning System、Global Positioning Satellite、全地球測位システム1))の衛星のおかげであるが、そのGPS衛星は、地球を周回していることから、当然に時間の遅れの影響がもたらされる。なぜなら、GPS衛星は、地球表面から20000kmの高度を11時間58分2秒で周回する準同期衛星である(静止衛星ではない)であり1), 2)、明らかに高度があるとともに、高速度であり、Gravitational time dilationと、Time dilation of moving particlesの両方の時間の遅れ現象を無視することが出来ないからである。高度があることで重力ポテンシャルに差が生じ、GPS 衛星上での時間は地球表面より早く進む3)。一方、高速度によりGPS衛星上での時間は地球表面より遅くなる3)。そこで、本報告書では、これらGPSにおける時間の補正についてまとめたい。
GPS衛星には、一般相対論に従う時間の補正と特殊相対論に従う時間の補正の2種類あり、それぞれが、Gravitational time dilationと、Time dilation of moving particlesの時間の遅れ現象を補正するものである。九州大学の物理学者である野村清英博士3)によれば、重力ポテンシャルの差による時間の遅れの大きさは、
∆U/c^2=5.27E^(-10)
によって計算できる。ここで、ΔUは重力ポテンシャルを示し、その値はgh(重力加速度×高度)となる4)。cは光速2.99792458E8 m/secである5)。GPS衛星の速度(3.874 km/sec)による時間の遅れの大きさは、
-(v∕c)^2∕2=-8.4E^(-11)
によって計算できる。ここでvは衛星の速度である。これら2つの式をまとめて、相対論効果による時間の遅れがまとめられ、
dτ≈(1+U/c^2 -v^2/〖2c〗^2 )dt
と計算できる。ここでdτは地球を中心とする慣性座標系の中を速度vで移動する時間(GPS衛星の時間)、dtは地球座標での時間となり3)、これを計算すると、地球座標の1secよりも、4.43E-10 secだけGPS衛星の時間が進んでいることとなる。そのため、GPS衛星の時計は、4.43E-10 secだけ遅く進むように補正されている(ただし、筆者の理解に間違いなければ…である)。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/グローバル・ポジショニング・システム (閲覧2018.10.25)
2) 砂原秀樹: GPSの仕組み(1). IPSJ Magazine 43: 1-2, 2002.
3) http://maya.phys.kyushu-u.ac.jp/~knomura/museum/GPS/GPS.html (閲覧2018.10.25)
4) 遠藤龍介: よく見る相対論の誤解. 東北物理教育 26: 2-9, 2017.
5) http://maya.phys.kyushu-u.ac.jp/~knomura/museum/GPS/node2.html (閲覧2018.10.25)