題名:Ultralightのギアに使用されるDyneema®素材について
報告者:トシ
数年前からの登山ブームは、もはやブームだけではなくなってきた。それは、中高年の健康志向も手伝ってもあろうが、その根底には自然への回帰も含めて、人間の原点への見直しでもあるのかもしれない。
そもそも人類の歴史を辿れば、アフリカからの旅路に始まり、新たな新天地を求めて移動した結果、現在の地球上の人類の繁栄がある。移住、移動、定住を繰り返すことで、徐々に規模を拡大し、自然界での今の人類の地位を築いた。そこでは、破壊と殺戮も繰り返されたが、荷を背負って天地をさまよい、やがて定住する様は、登山のそれとよく似ている。登山も、食料、衣類、居住(テント)をパッキングし、それを背負って移動するのは、かつての人類が営んだ様相と、さほど大きな違いがないのかもしれない。登山することでふと野生への目覚めが感じられるのは、そのせいかもしれない。
その移動、定住は、現在では宇宙へも触手を伸ばし、やがて火星で定住することも人類の新たな夢への旅路ともいえようか。そして、今では火星の環境で生まれて育ったヒトが、地球のヒトとは異なる特徴を備える生物として進化していくことも明らかに予測されている1)。しかしながら、いずれにせよ、登山や観光も含めて、人類のDNAには、きっと移動せずにはいられない何かが組み込まれてるに違いない。
そのような移動に伴う、特に、登山に限っていえば、それに伴うバックパッキングには、食料、衣類、居住(テント)をすべてに渡ってパックしなければいけない。しかも、それらすべてに快適性を求めるとなると、重量もかさばる。一度でも大きな山に登山した方なら同じような意見を持っているかと思うが、如何にして快適性と軽量化を両立させるかが、バックパッキングに伴う大きなトレードオフ問題となる。すなわち、快適性を求めれば求めるほど、やはり重量が増し、逆に軽量化を追求すればするほど、快適性が犠牲となる。そのため、その両立を図るためには、なんらかのコンセプトが必要となる。その一つにUltralightがある。
Ultralightのパッキングに関する知恵としては書物「Ultralight Backpackin’Tips」などを参考していただくと分かりやすいが、単純な軽量化を図ると、例えば、パックなら必ずといっていいほど耐久性が劣る素材で構成される。結局、軽さに騙され、使用すると破れやすい(壊れやすい)。これが、登山にとっては致命的な欠点となる。荷を運べない。場合によっては死活問題ともなる。そこで、Ultralightギア界では素材も非常に重要視され、様々な軽量、かつ、耐久性がなければいけないことを念頭に、様々な素材が開発されている。その中でも近年、最も有力視されているのが、Dyneema®である。以前は、Cuben Fiberと言われていたために、こちらに馴染みのある人も多いかもしれない。
Dyneema®は、元々はアメリカンカップレーシングボートのハイテクセイル用に設計されていたが、耐久性が高く、水に浮くほど軽くて軽い特徴からUltralightギア界ではパック、超軽量テント、タープなどの素材として評価されている2)。図にDyneema®によるUltralightのパックの例を示す2)。このようなUltralightのギアを使えば、一味違う登山も楽しめるかもしれない。
図 Dyneema®のパック例2)
1) https://gigazine.net/news/20180601-mars-new-human-species/ (閲覧2018.6.20)
2) https://www.hyperlitemountaingear.com/ (閲覧2018.6.20)