題名:マックス・シェーラーの愛の特性に触れ、愛の深度のものさしを作成する
報告者:ログ
マックス・シェーラーは1874年~1928年に渡り活躍したドイツの哲学者であるが、その時代背景、すなわち、1914年~1918年における第一次世界大戦の背景もあり、多くの人間観に対する洞察を得、哲学的人間学という学問を樹立した1), 2)。その中の重要な思想の流れに、愛がある。
そのマックス・シェーラーの愛について研究した小泉仰博士3)によれば、愛とは、自他の方向に関せず、対象の如何を問わずに、対象に於ける積極的価値の存在へ向かう作用として規定され、人格と結びついた自発的作用とされる。それでは、この積極的価値とは何であるかと問えば、個体に表れる場が周囲に及ぼし、周囲の拡大と云う積極的はたらきを荷うもの、となろうか。そのため、愛は、自他の人格をも、堅く結びつけ、その中に結びつける所の愛共同体の原理として働く。しかしながら、人間の愛は、この宇宙的な、一切の内に、一切のものに即して、現実的である力(神の愛)の特殊の変種、もしくは、一部分機能にすぎない、とも指摘されている。このことから、人と人との間における愛は周囲を拡大し、時に深度を増す。ただし、どのように愛共同体として深度を極め、あがいたとしても、個体間に表れる愛を宇宙の果てまでに浸透させるには、なかなか難しいともいえるのかもしれない。宇宙の果てを愛でもって覗き見れるのは、やはり、神のみぞ知る、であろうか。しかしながら、その神の一部分機能である人間の愛でも、互いの価値領域を拡大すれば、太陽系の第三惑星である地球の海の底ならば、そこに人間としての愛の本質を垣間見れるかもしれない。報告書のNo.396でも示されているが、マリアナ海溝の最深部まで達したジェームス・キャメロン氏なら、きっと愛の深度も極めたことに違いない。
地球の海の底を探る今もって最も有効な手段は、潜水艦である。ジェームス・キャメロン氏が海底探検の際に操縦したディープシーチャレンジャー号や、日本が誇る潜水艦の一つであるしんかい6500における構造について、潜水艦に備わる球殻の強度が重要であることは、報告書のNo.442にて筆者が示したところではある。しかしながら、その最新の潜水艦といえども、深度を正確に測るのは困難とされる。許正憲博士ら4)は、潜水艦の深度計測に関して、非常に簡単そうに見えるが、実は非常に多くの問題を抱えていることを指摘している。それは、単純に圧力を水の比重で割ったり、音波伝搬時間に音速を掛けただけでは、様々な要素による誤差を含んだものとなってしまうためである。そこでしんかい6500では、塩分濃度、水温、および、圧力データから現場密度を求め、深度を算出している。それによって、許正憲博士ら4)は、値ができるだけ真の値にちかくなるような工夫を考案している。
それでは、人間の愛における現場密度とは何にあたるであろうか。拡大する場の周囲への愛をどのように測ればよいのであろうか。といいつつも、実は図の愛の深度のものさしすら作成できていない。
図 愛の深度のものさし5)を改図
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/マックス・シェーラー (閲覧2017.9.2)
2) http://www.ningengakkai.or.jp/about/humanics_lecture01.html (閲覧2017.9.2)
3) 小泉仰: マックス・シェーラーに於ける「愛」について. 哲學 30: 103-126, 1954.
4) 許正憲, 他: 「しんかい6500 」システムにおける潜水船深度測定法. JAMSTEC R 25: 13-23, 1991.
5) http://free-illustrations.gatag.net/2013/10/08/110000.html (閲覧2017.9.2)