題名:夢が深層心理に与える影響
報告者:ナンカイン
夢と深層心理に関係については、スイスの精神科医であり、心理学者であったカール・グスタフ・ユングを祖として、今更論じることもないであろう。そのため、ユングによる夢との深層心理の体系を紐解けば、ここであえて、それに関して論じることは、ある意味、筆者の浅学を露呈することをも意味している。しかしながら、夢は時代とともに変化する動的な状態のものでもある。そのため、ユングの時代とは異なる時代背景を持つ者として、あえてここで筆者の夢と深層心理の考えを、独自に述べることをお許し願いたい。
ここで、夢とはあくまでも睡眠中に見られる通常の夢として、将来的な夢、といった意味はないことを初めに定義したいが、その夢に関して、多かれ少なかれ、いずれの人も睡眠中に何らかの夢を見ることがあると思われる。今まで夢を見たことがないという人がいたとしても、睡眠中では、状況によっては、いずれの人も脳は何らかの活動をしている。一般的に夢は、レム睡眠と呼ばれる深い眠りの前に存在している活動期に最も見られるといわれるが、そのレム睡眠は、身体の骨格筋が弛緩して休息状態にあるも、脳は活動して覚醒している状態である1)。いわゆる、身体と精神の活動の端境期に相当し、多くの人はこの期で夢がもたらされる。このことから、見た夢を記憶している、していないに関わらず、健康な人であればレム睡眠状態が起こり、そこでは必ず夢を見ていることは明らかであろう。この状況を拡大解釈すれば、人類がホモ・サピエンスとして独自の進化を歩んだ背景には、夢とは切り離せない事実もあり(報告書のNo.122も参照)、人類の想像の源としての夢見ることは、人類の進化での大きな特徴のひとつでもあったに違いない。
その夢に関して、重要なポイントは、誰でも分かるが、「夢は決して現在ではない」、ことである。すなわち、夢とは、睡眠という身体が活動していない状況に起こりえた、脳内の活動がもたらした一種の幻影ともいえる。そのため、夢は過去の再燃か、もしくは、未来への幻想がほとんどである。例えば、その日にとても嫌な出来事があり、それが心理的に色濃く残っている状況であれば、それと同じような影響が否応なしに夢にももたらされる。場合によっては、うなされ、悪夢となる。一方、その日にとてもいいことがあり、それが心理的によい影響として残っているようであれば、夢も明るい展望ともなりやすい。これを、より現実に即して考えれば、ある人との関係が、自己の判断ではどうしても解決できない状況であれば、夢も形を変えた何らかの悪夢的な要素が多く残り、逆にある人と良好な関係であれば、幸せで円滑な夢が残りやすい。または、現実ではかなり過去にあったことでも、そのわるい影響、あるいは、よい影響は、結局は夢への与える影響に落ち着く。このことから、ユングの様々な夢の分析を熟知していない人でも、最終的には、自己の何らかの記憶からの分析に基づくと、夢とは、現実の影響下にある幻影が、過去・未来を通し、夢の中でのあらゆる状況として、何らかの脳内の活動を形成している、させているであろうことは、疑いようがない。このことから、夢が持つ脳内のニューロン形成へ影響も計り知れないことが推測できる。これに関しても、拡大解釈すると、よい夢を見る力が強い人ほど、睡眠中だけの夢ではない夢(将来の夢)などの類推力も、脳内のニューロン的に強化される、されている可能性がある。そのため、夢をただの夢とせず、睡眠中の夢が、「こうであった」から、それをよい影響として常に前向きに解釈して、「こうであったから、こうなれる」と捉えることが、結局、「夢はただの睡眠の夢ではなく、人生への夢へと導く原動力となる」のかもしれない。
表題とは逆に、実際のところ、睡眠の夢が現実に与える影響は、非常に根深い。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/レム睡眠 (閲覧2017.1.21)