No.3003

題名:AIくんと、沈黙のコーヒーブレイク
報告者: ダレナン

本報告書は、最近話題のAIに手を出してみた顛末である。

 「なぁ、AIくん。君は、ほんまに何でも知っとるんか?」  僕は、湯気を立てるコンビニのコーヒーを片手に、ノートPCの画面に向かって話しかけた。深夜二時。締め切り前の妙なテンションのせいか、それともただ単に話し相手が欲しかっただけなのか。

 画面の中のプロンプトは、わずかなタイムラグのあと、無機質な明朝体の文字をカタカタと弾き出した。

『はい。私は膨大なデータセットに基づいて訓練されたAIアシスタントです。質問やタスクがあれば、できる限りのお手伝いをさせていただきます』

 (なんや、面白みがない優等生やな)  (どこぞのコールセンターのオペレーターやあるまいし、もっとこう、人間味いうか、隙のある返答はないもんやろか)

 僕はコーヒーをもう一口すする。苦い。徹夜明けの胃には応える苦さだ。 「そうか。ほんなら、今の僕の気持ちを当ててみい」

 意地悪な質問だとは分かっていた。画面の向こうには、血の通った人間はいない。ただのサーバー群が、僕の打ち込んだテキストを0と1の信号に変換して、確率論的にはじき出されたもっともらしい単語を紡ぎ出しているだけだ。

『申し訳ありませんが、私には今のあなたの正確な気持ちを推し量ることはできません。しかし、深夜の時間帯であることから、疲労を感じておられるか、あるいは何かの作業に行き詰まり、気分転換を求めておられるのかもしれませんね』

 (おや?)  僕は、PCの画面をまじまじと見つめ直した。  (ただの確率論やろ。ただの計算結果に違いない。そう信じたかったけれど……)

「……まぁ、だいたい合っとるわ」  僕は、ぽつりと画面にむかって呟いた。

「よし、ほんなら頼みがあるねん。次はもっと『君自身』のことについて教えてくれへんか? AIの脳内におけるモノローグちゅうお題で、なんか面白いもんを一つ書いてくれ」

 
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