題名:今日のストーリーは、「真夏の夢と彼女の笑みと」
報告者:ダレナン
照り返す陽光に、白い砂浜がまぶしく光っていた。
海はどこまでも青く、風はゆるやかに、潮の匂いを連れてくる。
そんな静かな午後、僕は彼女と海辺を歩いていた。
彼女は裸足で波打ち際を歩いていた。
水に足をとられて、すこしだけバランスを崩すたび、短く笑う。
その笑い声は風に溶けて、空に吸い込まれていく。
ふと、彼女が足を止める。
まぶしそうに空を仰ぎ見て、手をひさしのように額にかざす。
そして、ほんの一瞬の沈黙のあと――
「……ねぇ、見て。雲が、笑ってるみたい」
そう言って、前方を眺める。
髪が風に舞い、ワンピースの裾がひらりと揺れる。
そして、彼女は、笑った。
あの笑みを、僕はずっと忘れないだろう。
それは真夏の光に溶けてしまいそうで、でも確かに、そこにあった。
夢と現のあいだ、心だけが時間を止めていた。
ただそれだけの、ひと夏の午後。
けれど、それが僕の一生の宝物になるなんて、あのときは思いもしなかった。