No.2984

題名:今日のストーリーは、「砂の上の誘い」
報告者:ダレナン

「ねぇ、グラビアの撮影って、こんな感じ?」

砂にうつ伏せた彼女が、頬杖をついたまま僕を見上げてくる。
潤んだまなざしは、どこかいたずらっぽく、それでいて…なぜだろう、肌の内側をくすぐるような熱を連れてくる。

潮風がそっと吹き抜けるたび、彼女の髪が肩に貼りつき、細い背筋の線をなぞる。
水着の隙間から覗く素肌に、塩の気配と陽射しの名残が残っていて、それはもう「視る」よりも、「触れる」に近い感覚だった。
僕の指先までが、何もしていないのに、微かに潮を吸ったような気がする。

「そう…じゃないかな。撮影したことないけど」

かろうじてそれだけ答える。けれど声は、いつもより少し低く、乾いていた。
彼女は小さく笑い、両脚を後ろで組むようにして揺らす。太ももに砂がきらきらと貼りつき、そのすべてが僕を誘っていた。

波音が遠くに響いている。
でも今、ここで鳴っているのは、彼女のまなざしがかきたてる鼓動の音だった。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ