No.2954

題名:今日のお題は、「Ralph Tresvantの曲「Sensitivity」のSensitivityさについて」
報告者:ダレナン

(No.2953の続き)
Ralph Tresvantの「Sensitivity」は、そのタイトル通り“繊細さ”=“Sensitivity”を全面に押し出したソロデビュー曲であり、その「Sensitivityさ」は、R&B史の中でも特に特徴的な感情表現のあり方を象徴しています。では、その「Sensitivityさ」とは何なのか。以下にそのポイントを整理してみましょう。

1. 男性の優しさを肯定的に歌うメッセージ性
「Sensitivity 」は、1980年代後半から90年代初頭のR&Bにおいて、新しい男性像を提示した曲です。従来の「強くて支配的な男」像から、「女性の気持ちに寄り添い、感受性を持った男」への転換を象徴しています。

歌詞の中でRalphは、「君にはただの男じゃなくて、思いやりと感受性を持ったパートナーが必要なんだ」と訴えます。これは、「優しさ=弱さ」ではなく、「優しさ=強さであり魅力」だという価値観の提示でもあります。

2. ヴォーカル表現に宿るSensitivity
Ralphの高くて甘いテナーは、決して力任せではなく、語りかけるように繊細です。まるで囁くようなトーンで、聴く人の心に静かに触れるような歌唱が、この曲の核心的な「Sensitivity」を支えています。

3. プロダクション(制作)面での繊細なサウンドデザイン
この曲のプロデュースは、当時の最先端プロデューサーチーム「Jimmy Jam & Terry Lewis」が担当しており、彼らの手腕も曲の「Sensitivityさ」に大きく貢献しています。

ソフトで艶やかなシンセサウンド
鼓動のようなスローなドラムパターン
空間を活かしたミックス処理

これらが、感情の機微を繊細に浮かび上がらせ、「耳から入って、心に残る」ようなサウンドを作り上げています。

4. 時代背景とその“反骨”としてのSensitivity
1990年リリース当時のR&Bシーンでは、New Jack Swingが席巻し、よりハードでグルーヴィーな音が求められていました。そんな中で、この曲はあえてソフトで優しいスタイルを選び、「男らしさ=強さ・粗さ」というステレオタイプに対するカウンターカルチャー的意義も持っていたと言えるでしょう。

結論:R&Bの“柔らかさ”を武器に変えた曲
「Sensitivity」は、単なるラブソングではなく、「男性の感情表現の幅を広げた」点で画期的な楽曲です。Ralph Tresvantのボーカル、プロダクション、歌詞、すべてが一体となって、「優しさは美徳である」というメッセージを繊細に、しかし確実に伝えてくる。

その意味で、この曲の「Sensitivityさ」とは、「感受性を持つことが、真の愛と理解を生む」という、R&Bの深い哲学そのものなのです。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ