No.2878

題名:今日のお題は、「貴婦人Dの甘美なる罠」
報告者:ダレナン

(No.2877の続き)
 僕が彼女と出会ったのは、港町の片隅にある古びた酒場だった。壁には時代遅れのランプがともり、酒臭い男たちがカードを切る音が響いていた。その中で、ただ一人異質な存在があった。
 貴婦人D。
 彼女の存在は、そこにいるだけで周囲の空気を変えた。紫煙の向こうに浮かび上がるその肉感的な肢体、深紅のドレスに包まれた白い肌。グラスの縁をなぞる長い指は、男たちの理性をゆっくりと削り取っていく。 僕は一目で魅入られてしまった。
 「あなた、なかなかいい目をしているわね」
 彼女はそう言って微笑む。紅い唇がわずかに歪むだけで、僕の脳は甘い霧に覆われるようだった。
 「D様……」
 無意識にその名を口にすると、彼女は満足そうに喉を鳴らした。
 「いい子ね。私をそう呼ぶなら、あなたに少しだけチャンスをあげるわ」
 「チャンス?」
 彼女は腰をくねらせ、僕の耳元にそっと囁く。
 「私と寝たいのなら、もっといい声で呼ぶのよ」
 その瞬間、僕の全身が灼けるように熱くなった。
 「ああ、D様……わたくしはもはやあなたのとりこ……」
 すると、彼女はゆっくりとドレスを脱ぎながら、一糸まとわぬ寸前でのあらわな姿となり、僕の頬を撫で、笑った。

 「なかなかの者ね」
 その声に酔いしれながら、僕は気づいた。
 これは甘美なる罠なのだと。
 だがもう遅い。僕の理性は、D様の手の中でゆっくりと溶かされていくのだった——。

今日のお題は、「貴婦人Dの甘美なる罠」

 
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