題名:今日のお題は、「ハッピーエンド写真館」
報告者:ダレナン
(No.2812の続き)
シャッター音が響くたびに、頼子の笑顔がファインダー越しに映し出される。今日の彼女はいつもよりも輝いて見えた。
「隆志、実はね——」
彼女は、カメラの前からふっと姿勢を崩し、僕の方へ歩み寄った。
「私ね、ずっとあなたに言いたかったことがあるの」
「……何?」
頼子は少しだけ頬を染め、僕の目を真っ直ぐに見つめる。
「隆志が、写真館を続けてくれて本当に嬉しいの」
「……え?」
「一時期、大変だったでしょう? 私、ずっと見てた。でも、今こうして隆志が前を向いて頑張ってるのが嬉しい。私はね、あなたの写真が好き。あなたが撮る私の写真が、どんなカメラマンよりも好きなの」
言葉が胸に染み込む。頼子の言葉は、僕が長い間欲しかったものだった。
「だからね、誕生日プレゼント、決めた!」
「え?」
「私を撮ってくれる?」
頼子は無邪気な笑顔を見せた。
「いつも撮ってるじゃないか」
「ううん、そうじゃなくて……私だけを見て、私だけのために、今日の私を撮ってほしいの」
その言葉に、胸が熱くなった。
「わかった」
僕はカメラを構えた。今日の頼子は特別だった。きっと、この先何年経っても、今日の彼女の輝きを忘れないだろう。シャッターを切るたびに、頼子が微笑む。そして最後の一枚を撮った瞬間、彼女が僕の手を取った。
「ねえ、もう一つ欲しいものがあるんだけど」
「何?」
「隆志の隣」
頼子は少し照れたように微笑んだ。僕は黙って彼女の手を握り返した。
カメラがなくても、僕の瞳には、彼女の姿が永遠に焼き付いていた。
今日のお題は、「ハッピーエンド写真館」