No.2806

題名:今日のお題は、「宇多田ヒカルの曲「忘却 featuring KOHH」の背景にあるもの Part1」
報告者: ダレナン

(No.2805の続き)
 今日のお題は、「宇多田ヒカルの曲「忘却 featuring KOHH」の背景にあるもの Part1」
「忘却 featuring KOHH」は、宇多田ヒカルのアルバム『初恋』(2018年)に収録された楽曲であり、宇多田ヒカルの特徴的な繊細な歌詞と、KOHHのリアルなリリックが絡み合うことで、深い感情を描き出しています。この曲の背景やテーマを考察すると、以下のような要素が浮かび上がります。

1. 忘却(Forgetfulness)というテーマ
「忘却」というタイトル自体が示唆するように、この曲は「記憶」や「過去との向き合い方」をテーマにしています。宇多田ヒカルのパートでは、別れや喪失、そしてそれを忘れようとする葛藤が静かに歌われています。
しかし、単なる「忘れたい」という願望ではなく、「忘れることができないからこそ、忘れようとする」という複雑な心理が込められているように感じられます。
歌詞の中にある、「忘れていいよ いつかの私のことなんか」というフレーズは、一見すると「過去の自分を忘れてほしい」という諦めの言葉のようにも聞こえますが、実際には「忘れられるものなら忘れてみてよ」といった逆説的な意味も含まれているのではないでしょうか。

2. KOHHのラップが示す「生と死」
宇多田ヒカルの静謐な歌声に続くKOHHのラップは、極端に現実的でありながら、哲学的な死生観を持っています。
KOHHのパートでは、「金があっても死んだら意味がない」「悲しいけど人生は続く」といった直球の言葉が並びます。
これは、KOHH自身が経験してきた人生の厳しさや、身近な人の死と向き合ってきた背景が大きく影響していると考えられます。宇多田ヒカルが表現する「忘れたいけれど忘れられない感情」に対して、KOHHは「忘れるも何も、人生は続いていくし、死んだらすべて終わり」という、より突き放したリアルを提示しているのです。
この対比が、「忘却」というテーマをさらに深く掘り下げています。

3. 宇多田ヒカル自身の人生とのリンク
宇多田ヒカルは、母・藤圭子の死という大きな喪失を経験しており、その影響が彼女の作品に色濃く表れています。
この曲においても、喪失に対する複雑な感情が描かれており、特に「忘れること」の難しさが浮き彫りになっています。
「忘れることはできないが、時間が経てば風化するものもある」「過去の自分を受け入れつつ、どう前を向くか」このような思索が、この曲全体を包んでいるように思えます。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ