No.2723

題名:今日のお題は、「ガラス越しの君へ」
報告者:ダレナン

(No.2722の続き)
雨が降るたびに、あの光景を思い出す。
窓の向こうで座る彼女。頬を伝う雨粒が、まるで涙のように見えた。
その姿はまさに美しかった。

当時の僕は、彼女のすべてに魅了されていた。言葉にしなくても、気持ちは通じていると信じていた。雨粒が窓を叩く音の向こうで、彼女が微笑むだけで、それだけで世界が輝いて見えた。

でも、時が経つにつれ、僕たちは少しずつすれ違っていった。
忙しさにかまけて、言葉を交わす時間が減った。心の内を伝え合うことを怠った。
「大丈夫」
「また今度話そう」
そんな言葉で誤魔化しているうちに、僕たちは遠ざかってしまった。

ある日、彼女は静かに言った。
「私たち、もう終わりにしよう」

その瞬間、僕の心はガラスに覆われた。今まで確かに届いていたはずの彼女の声も、もう聞こえない。ただ、雨の音だけが耳に残る。

そして半年が過ぎた。
彼女のいない日常にも慣れたはずなのに、雨が降ると胸が痛む。窓の外を眺めても、もう彼女はいない。僕の心の中でだけ、ガラス越しの君が泣いている。

だけど、もう手を伸ばしても、届かない。

今日のお題は、「ガラス越しの君へ」

 
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