題名:今日のお題は、「古い写真の向こう側」
報告者:ダレナン
(No.2664の続き)
久しぶりに物置の奥を整理していたら、古びた箱の中から一冊のアルバムが出てきた。黄ばんだページをめくると、懐かしい顔が現れる。彼女の写真だった。
何年ぶりだろう。ふと胸の奥が締めつけられるような感覚に襲われる。彼女は笑っていた。あの頃と同じ、無邪気でまっすぐな笑顔で。
指先でそっと写真をなぞる。もう二度と会うことはないかもしれない。でも、もし偶然どこかで出会ったとしたら、どんな顔をすればいいのだろう。
「今、どこで何をしているんだろう?」
その疑問が頭をよぎる。彼女は幸せに暮らしているだろうか。誰かと結婚して、子どもがいたりするのだろうか。そう考えると、自分が過去に置いてきたはずの感情が、静かに胸の奥で疼きはじめる。
——本当は、彼女と結婚したいと思っていた。
あの時、素直にそう伝えていれば、未来は変わっていたのかもしれない。けれど、ちょっとしたすれ違いが積み重なり、気づけばお互いの間には埋められない距離ができていた。
「なぜ、あの時もっと正直に向き合えなかったんだろう」
後悔が波のように押し寄せる。過去には戻れないとわかっているのに、もしもあの時やり直せたら、と考えてしまう。
「……バカだな」
苦笑しながら写真を閉じる。今の自分には、妻がいて、家庭がある。幸せなはずだ。それなのに、どうして彼女のことを思い出してしまうのか。
心のどこかで、彼女が幸せでいてくれることを願う。そして、自分もまた、今ある幸せを大切にしなければならない。
写真をアルバムに戻し、そっと箱を閉じる。思い出は思い出のまま、静かに胸の奥にしまっておこう。
けれど——いつか、どこかですれ違ったら。
その時は、もう少しだけ、素直に微笑むことができるだろうか。
今日のお題は、「古い写真の向こう側」