No.2162

題名:ひもらしき管
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.2161の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 何度も何度も憎しみを込めてその白い灰を踏みしめた。でも、彼らを葬った象徴でもあるその死の粉は、踏みしめる足の動きに合わせて、ふわりふわりと僕の足に纏わりつく。それは、かつて僕を殺したんなら、今度は、再び僕を殺しにかかるような存在だった。

(僕は、彼らに殺されたのに、またやられるのか…)

 しつこいほど死の灰が足に纏わりつく。畜生…。

 誰かを憎めば憎むほど跳ね返ってくる。僕はどうしようもなく居た堪れなくなった。

(それは…僕の責任なのか…僕が弱いからなのか…)

 死の灰が纏わりつく。しつこく、それもじわじわと…。

 そうして僕はなくなった時間の事を考える。ふと意識がなくなり、時間が止まる。僕も止まる。そこで、もし吹き返さなければ、僕はいない。僕の魂は、遠く過去に戻って….、あの時、あの瞬間を思い出す。

 暗いトンネルの先には、誰かがいる。僕は抜け出そうとしても抜け出せない。必死にもがく。もがき続けると、そこに意思の力がそなわる。僕はトンネルのずっと先にある奥を見つめる。視界が近づく。少しづつ光の世界が開けてくる。
 僕は外の鼓動を感じ、そしてその明かりの先を目指す。
 外に出るには体の膜をはがさないといけない。それに、ねじれだ。ねじらないと、僕はうまく外に出られないんだ。
 呼吸し始め、呼吸を合わせ、僕はそこに胎動を感じる。
 シンクロする。
 しかし、シンクロした共同体は、次第につながりが隔てられ、個としての意志を命じられる。太陽の神キニチ・アハウは僕に命ずる。

 「今日からあなたは地上の子に生まれいずる」

と。トンネルの先に人が見えた。その人は僕をうまく誘導する。僕はその助けもあってねじれを体得して、トンネルをするりと抜け出す。抜け出した後、へそにはまだ何かがくっついていた。ひもらしき管。

 
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