No.1855

題名:もう、何もない。
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1854の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 ある意味、Monn Townの象徴、あるいはこぶちゃんブランドを鼓舞しているその月の世界において、僕はこぶちゃんを永遠に葬り去るという選択を選んだ。それは、無意識の行動でもあった。
 僕は、これを、こぶちゃんを、葬り去らなければならない、それが責任。そう思い込んでいた。僕にはもはや選択の余地はなかった。管を抜く。

 もう何も残されてはいない。
 ひたむきに傾けたあの情熱も、そしてあの感動も。
 僕には何もなかった。
 永遠に死に続ける。
 永遠に死に続ける。
 永遠に死に続ける。
 僕は…

ツキオ:「ノブヨシくん。悪いが、君は、駐車違反、死体遺棄のみならず、ここで、殺ラクダ罪を犯した。それについて、如何なる理由があろうとも、わいは君を逮捕せざるを得ない。悪く思わないでくれ。これが、わいのMoon Town自警団としての職務なんや…」

僕:「あはっ、あはは…。そうだよね…。うん、そうだよ」

 そう言って、彼は僕に手錠をかけた。その後、幾分、意識がはっきりしてきた。目の前にはどろどろととけたこぶちゃんの死体が見えた。
 ツキオがかけた手錠は、ある人がある年齢に達して、大人になって、そうして、頭が固くなるのと同じく、僕の精神をも縛り上げていた。僕には、もう、何もない。想像も、創造も、そして、そのかけらも。こぶちゃんちゃんとの夢も希望も、もはや果てしない宇宙の彼方にそれらすべてを葬り去っていた。

ツキオ:「悪いな。ノブヨシくん。せっかく君といい関係になれたと思っていたが…」

 がちゃん。

 僕はMoon Townの牢屋に閉じ込められた。とても暗く光のあまり届かないその部屋の中の隅で、僕の心もその部屋の隅と同じように閉じ込められた。カサコソ。スーパーGが走行している。あの時代の、あの豊かなひらめきは、こぶちゃんがいない今、何も浮かばない。僕の頭の中には、長く、長く、とても長い、それでいて静かに進行するLong VersionのAn Ending (Ascent)が、ずっと鳴り響いていた。

 
pdfをダウンロードする


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。



...その他の研究報告書もどうぞ