題名:ロケットの積み荷
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1828の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
ヴェルヌーブ氏は、フランコ・ハバド氏の最期の願いを載せ、打ちあがってゆくロケットを傍から眺めながら、その周りの星々を鑑賞した。暗い闇に光る星々。Stars (Remastered 2005)。
(やはりこれでEnoか、それでイーノだろうか、結局、ブライアンなのか…)
そんな思いをぬぐい去ることができなかった。
ヴェルヌーブ氏:「やはり詳細に検体②のWDについて調べる必要がありそうだ」
ジュニ・ヴェルヌーブ氏は、足早にスペースZ社バージョン5の研究室に戻り、検体②のWDのデータを再チェックした。軽犯罪者と記されているも、器物破損のみで、それほど異常な資質は認められなかった。
ヴェルヌーブ氏:「これならば安心だな」
ただし、データの最後には意味不明の言葉が綴られていた。
{この男WDの象徴として、執着の疫あり。欲望の発出による心的解放感、すなわち快楽として、愉悦(明)と不安(暗)の移行、甚だしい。欲望エネルギーの散逸により、システムの不安定さを有する。以上}1)より抜粋
ヴェルヌーブ氏:「ただいまフランコ・ハバド氏の最期の願いを込め、ロケットを打ち上げた。Moon Town宇宙科学研究所所長、ジムズ・キャロメン博士、応答せよ」
キャロメン博士:「はいはい、なんでございましょ」
ヴェルヌーブ氏:「今回の積み荷は、Moon Town内でも極秘扱いにしていただきたい。第一弾にはあれ、第二弾にはあれがのっている」
キャロメン博士:「了解でやんす」
ロケットは無事に終着の駅であるMoon Town宇宙空港に着した。ロケットの積み荷は、Moon Townの住民に誰一人として見られないよう、厳重にMoon Town宇宙科学研究所の所長のもとまで運ばれた。
1) 黒石晋: 欲望するシステム. ミネルヴァ書房. 2009.