No.1797

題名:スーパーG
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1796の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 取り調べの最中なのに、その出されたかつ丼は、驚くべき程極上であった。豚肉の状態といい、かつの揚げ具合といい、卵の溶き方といい、粒ぞろいのご飯といい、すべてがぎんぎらにマッチしていた。そいつが、(Japaneseレストラン)うまいんやの、やりかた~ってな具合だった。ただ、特盛過ぎてすべて食べられるか分からない。かといって、残すわけにもいかない。「心して食え」。そんな葛藤する心持ちで、がつがつと食べている僕の様子を見ているMoon人には、僕がよほど腹が空いていると見えたのであろうか。

Moon人:「君の食べ方。なかなかええの。こっちまで食べとうなる」
僕:「はい、お腹が空いてました」
Moon人:「もーいっぱいいくか?」
僕:「うっ……はい」

 断れなかった。この特盛を2杯。いくらなんでも無理。テーブルには遠隔宅配による2杯目がすでに届いていた。なんとか1杯目は食べたが、2杯目はどうしても無理だった。正直にMoon人にそのことを話した。すると、

Moon人:「そうか。じゃ、しゃーないな」

と言って、そのどんぶりの中身を床に落とした。Moon人が食べるのかと思いきや、もったいない。なんて、もったいないことを…。
 その時、カサカサ、カサカサ、と音がした。ゴキ。ゴキのペルニクス走行の音だ。1匹がその床に落としたかつ丼にささっと集まったかと思うと、次々と所かしこからゴキが現れた。気が付くと何十匹もそのかつ丼の山にたむろしていた。しかし、ほんの数分でその山が跡形もなくなり、床がきれいになったかと思うと、一斉にゴキは消えた。じっと見ていた僕は、あまりにもそのゴキのすごさに驚いた。
 何かが違う。地球上のゴキと何かが違う…。

Moon人:「なっ、君もこれでよー分かったやろ。そうやで、このゴキブリ、違うんや。地球におるものとな。これがハバド氏の新新時代のノアの箱舟の功罪なんや。ハバド氏が直々に頼み込んで、当時のゴキブリ研究の権威であったジョーズ・パイソン博士によって遺伝子を操作され、驚異的な運動能力と摂食能力を持つように改良されたゴキブリ。その名は、スーパーGや」
僕:「スーパーG…」
Moon人:「そう…だ」

(ということはハバド氏の宇宙移住計画にはこのスーパーGも含まれていた。そういうことになる…)

 
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