題名:デューン計画
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1786の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
5・4・3・2・1・0、発射。そうして、僕とこぶちゃんの月世界への旅立ちが始まった。スペースZ社の開発したロケットは順調に、そしてスムーズに月まで向かった。まさに、完璧だった。「ただいま、燃料タンクを切り離します」、「月がどんどんと大きくなってきています」、「静かの海が見えました」、「ただいまから、着陸船で着陸します」。どどどーん。着陸。月の土を踏む。こぶちゃんと歩く。流星にあたる。こぶちゃん死ぬ。着陸船に戻る。もう一度、月の土。スコップで穴掘る。埋める。着陸船に戻る。眺める。交信する。
僕:「CQ、CQ。こちらJH9WO7。たった今こぶちゃんを埋葬しました。どーぞ」
地球の管制塔:「何がありましたか。どーぞ」
僕:「こぶちゃんが流星にあたり、死にました。どーぞ」
地球の管制塔:「そうでしたか。それは残念です。どーぞ」
僕:「失意のまま、地球に帰還しようと思います。どーぞ」
地球の管制塔:「了解しました。ノブヨシ殿、お気をつけて。どーぞ」
僕:「ありがとございます」
僕が地球に帰還すると、スペースZ社の今回のMoon Town計画に対して、人選として僕がふさわしかったのか、彼はただラクダを埋葬しただけじゃないのか、動物愛護団体からラクダがかわいそうだ、と各方面から追求されていた。イロン・ナーシ氏は必死になって僕を弁護してくれていた。しかし、やがて、僕らの新世代のノアの箱舟の秘密裏もばれ、ナーシ氏はスペースZ社の代表取締役から失脚させられた。スペースZ社もスペースZ社バージョン5へと鞍替えさせられた。代表職を失ったナーシ氏は、失意のどん底の中、モモチ・コーポレーションとの共同事業の契約も打ち切る決意を表明し、宇宙開発の表舞台から去った。
スペースZ社バージョン5では、フランコ・ハバド氏を次の代表取締役として認め、新たな月世界への計画を発表した。それが、デューン計画だった。デューン計画、別名、砂の惑星計画。なぜデューンなのか。それは、月の、砂の惑星には、静かの海には、実は抗老化作用のある香料メランジがあることを、偶然に発見したからだった。どうやら僕がこぶちゃんのために掘った穴、そこで利用したスコップに、香料メランジが付着していたようだった。でも、それは僕の功績としては認められず、フランコ・ハバド氏によるものとして、脚光を浴びた。
当たり前だ。それがCreatorとしての特権だからだ。