題名:新世代のノアの箱舟
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1771の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
イロン・ナーシ氏とは馬があったというのだろうか。いやラクダがあったとでもいうべきなのか。話していて毎回、旧友に逢う感じがした。年齢が異なるのに不思議な体験だった。ナーシ氏もそれを感じていたようだった。だから、いつも、僕の提案に関して、
ナーシ氏:「ノブヨシ殿のその提案、異論なーし」
というのだ。そんな折、僕はナーシ氏に僕独自の提案を持ちかけた。それが宇宙服の開発だった。普段は月世界への輸入・輸出の話題がほとんどであったが、僕はとっさに何かを感じ、(いまだ、ナーシ氏にこのことを話すのは)、そう直感した。
僕:「こぶちゃんと月の砂漠を歩きたい。ナーシ氏、これについてどう思う?」
ナーシ氏は首を傾げた。そうだった、ナーシ氏はこぶちゃんの存在を知らない。そこで、僕はナーシ氏をこぶちゃんお部屋までお連れした。
僕:「ナーシ氏。これが僕の友達、こぶちゃんさ」
こぶちゃん:「ンゴォォォォォォオオオオオオオオオーーッ!」
その時のナーシ氏の見開いた眼を今でも忘れない。ナーシ氏は、きっとこぶちゃんに恋をしたのだ。僕と同じように。
ナーシ氏:「おほーーー、すごいこぶ。ラクダですねー。まさしく、なんて素敵な…」
僕:「そうでしょ。このこぶちゃんと月の砂漠を歩く。これが僕とこぶちゃんと出逢った5年前からの計画。そのためには、宇宙服がいるよね…こぶちゃんの」
ナーシ氏:「ノブヨシ殿のその提案、異論なーし」
そうして、僕は月世界への輸入・輸出の事業だけでなく、スペースZ社のMoon Town計画の新たな1ページ、動物の宇宙服の開発にも携わるようになった。それが、きっと新世代のノアの箱舟。
宇宙への移住は、僕とナーシ氏の後々のMoon Town計画を超えるべく、大きな目標となった。それは、ちょうど僕が16歳になった日だった。