No.362

題名:果物の歴史と効能
報告者:エゲンスキー

 果物、英語ではFruit(フルーツ)とつづられるが、その魅力は、言うまでもないであろう。匂い・形・色などどれをとっても人の感覚に訴え、人を幸せにし、人と根源的なつながりを持つ1)。その背景には、果物の繁栄の戦略に一理ある。果物は、種子植物の生殖器官の一部であり、種をまき散らすための手段である1)。その一方で、匂いや形、色などで人を含む多くの動物がそれに引きつけられるのは、食べられるからに他ならない1)。すなわち、人を含む多くの動物が果物を食べ、遠い場所で種を排泄すれば、植物の遺伝子が広い範囲で拡散できる1)。今では人が果物の種まで食べることは少なくなったが、かつてはこのようにして人を含む多くの動物からの排泄された種が、果物を世界中へと広めるきっかけとなったことは間違いないであろう。このことから、かつては、植物と人を含む動物とは、相思相愛の関係1)であったことがおのずと理解できる。動物に食べてもらうことで、果物の子孫が繁栄できるのである。また、Fruitは古くはラテン語Fructusに起源を持ち、果実はもちろん、結実する事、達成、成果など果物の成長を人生や努力の過程になぞらえて実を結ぶ事も表していたことから2)、人との営みにおいて果物は密接なつながりを感じずにはいられない。
 一方、果物には果物の繁栄の戦略である食べてもらうことばかりではなく、それを食べることによる恩恵も多い。例えば、柿、梅、リンゴにもその効能の言い伝えとして、「柿が色づけば医者が倒れる」とか、「医者を殺すに刃物はいらぬ。朝昼晩にウメを食え」とか、「リンゴが赤くなれば、医者が青くなる」などがある3)。このことから、古くから果物は体にもよいとされていたことが理解できる。なお、各果物の効能の一覧は、文献3)に詳しく記載されているので、そちらを参照していただきたい。
 近年は、スーパーの店先でも数多く見られるようになった果物ではあるが、日本人の果物の摂取量を調べると意外と少ない。図に2009年の1人1日当たり果物消費量の比較を示す。この図からも明らかなように、日本ではあまり果物の

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図 1人1日当たり果物消費量の比較4)

効能が意識されていないのかもしれない。私事ではあるが、先日、お腹に来る風邪を引いた。なぜか果物以外は食べたくなかった。それを機会に、今後は果物の効能も見直したいと思ったことの次第である。

1) NHK教育:地球ドラマチック「フルーツハンター~未知の果物を探せ~」. 2016年1月11日放送.
2) http://futaba-fruits.jp/1day1fruit/2013/10/post-41.html (閲覧2016.12.5)
3) http://www2.tokai.or.jp/shida/heaith_assist/kudamono_kouka.htm (閲覧2016.12.5)
4) うるおいのある食生活推進協議会:果物と健康 五訂版. http://www.kudamono200.or.jp/booklet/pdf/factbook.pdf (閲覧2016.12.5)

 
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